銭湯を引き継いだ良則さん(中央)。母操さん(左)、妻素子さん(右)と共に「ぬくもり」を守り続けていく

 【小山】市内で唯一の銭湯「幸(さち)の湯」(城山町2丁目)が今月、新たな店主を迎えて再スタートした。約60年にわたり番台に立ち続け、11月にがんのため84歳で亡くなった星良行(ほしよしゆき)さんの後を、長男の良則(よしのり)さん(61)が引き継いだ。良則さんは「地域の憩いの場をこれからも続けていきたい」と心を新たにする。

 幸の湯は1961年創業。迫力ある富士山や立山連峰のペンキ絵を眺めながら、天然鉱石の成分を含んだ「ラジウム温泉」と薬湯に漬かれる老舗だ。

 かつて市内には銭湯が6軒あった。時代の変化や後継者不足などで次々と廃業する中、「銭湯が無いと困る人もいるから」と、良行さんは店を守り続けた。

 病気が発覚したのは今春だった。治療を続けながら店に立ち続けてきたが、10月中旬に容体が悪化した。店は同月末から休業せざるを得なくなった。

 「あと4年したら継ぐ気でいたのに」。良則さんは運送会社に勤務していた。父の死は勤続39年目の出来事だった。「幸の湯の廃業は考えられない」。心の準備をする時間はなかった。「会社は代わりがいるが、ここは自分しか代わりが利かない」。11月末に退職し、湯の沸かし方など父の仕事を急いで覚えた。

 営業再開初日の今月12日、開店時刻に良則さんがのれん掛けると、いつものように常連客が訪れた。「待ってました」と喜んだのは10年通う50代の男性客。「ほぼ毎日来ていた。とってもとってもうれしい」

 店は母操(みさお)さん(86)、妻素子(もとこ)さん(59)と家族3人で切り盛りしていく。良則さんは「父が大切にしていたお客さんのために頑張っていきたい」と、湯船の上の富士山を見つめた。

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 「幸の湯」は午後3時半~9時半。金曜定休。中学生以上420円。(問)0285・25・0356。