六本木ヒルズにほど近い路地裏の一角に10月、全8席のこぢんまりとした店がオープンした。店主は佐野市出身の五月女(さおとめ)広之(ひろゆき)さん(63)。香港で名をはせた料理人の店とあり、食通やメディアの注目度は高い。
旬の国産食材に、海外の食材も融合させた料理を出すのが店の特長だ。コースで10品ほどを提供する。
締めの料理「土鍋ウニトリュフご飯」は北海道産ウニの濃厚なうまみと、旬の海外産地から仕入れたトリュフの芳醇(ほうじゅん)な香りが織り交ぜられた名物。香港にもファンが多かったという。
海外経験が長いが、栃木への思いは人一倍強い。香港時代から第一酒造(佐野市)の「開華(かいか)」と日光産ゆばを長年使い続ける。最近は宇都宮産のユズを仕入れ始めたという。
佐野日大高を卒業後、実家のすし屋の跡を継ぐため、高級すし店の銀座久兵衛(きゅうべえ)で修業。その後、腕を見込まれアムステルダムの日本料理店に渡り、続くロンドンでは15年間にわたり研さんを積んだ。ミラノやパリでも日本食を伝えた。
香港では開店から10年以上連続でミシュランの星を獲得。望郷の念が芽生え始めた頃、現地で民主化デモが激化し帰国を決めた。
新型コロナ禍の中、有名店が並ぶ西麻布で挑戦することにした。「激戦区なので、毎日身が引き締まる気持ちです」。若々しい笑顔を浮かべ意気込みを語った。
メモ 港区西麻布3の1の9 電話03・5843・0537。午後5時半~10時。日曜休。予約制。コースのみで2万3千円(消費税、サービス料別)から。
■店主の思い
香港にいた時も年4~5回は帰国し、佐野に帰って佐野ラーメンを食べていました。宇都宮餃子(ぎょーざ)も好きです。故郷をPRしたい気持ちがあるので、栃木の食材もいろいろと使っていきたいと思っています。