光雲荘の予約状況を管理するパソコン画面。赤く囲まれた「取消」の文字がずらりと並んだ=15日午後、那須塩原市塩原

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」の全国での一時停止決定から一夜明けた15日、栃木県内観光地に宿泊予約キャンセルの嵐が吹き荒れた。書き入れ時の年末年始を前に「最悪のタイミング」「人手も食材も手配したのに」と、いら立つ関係者。一方、旅行を取りやめる県民は「マスクが要らない日常を取り戻したい」との願いを口にした。

 「年末年始に差し掛かる最悪のタイミングだ」。塩原温泉観光協会長で那須塩原市塩原の旅館「光雲荘」の君島将介(きみしままさゆき)社長(59)は憤りを隠せない。15日朝、フロントで予約状況を確認すると、ネット予約を中心に「取消」の連続。正午までのわずか半日でキャンセルは30件以上に上った。

 年末年始はゴールデンウイークと並ぶ繁忙期。期間中のスタッフの手配はもう済ませた。食事も特別メニューで客単価が高い。食材の手配、仕込みも始まっており「地域経済への影響は深刻。感染状況を勘案すれば停止はやむを得ないが、もっと早く止めていれば年末には再開できたはずなのに」と苦悶(くもん)する。

 日光市鬼怒川温泉大原の「鬼怒川パークホテルズ」も同日、GoTo一時停止期間中に予約が入っていた575組のうち約110組が一気にキャンセルとなった。予約の大半はGoTo利用者。小野真(おのまこと)社長(48)は「キャンセルは今後も続くだろう」と危ぶんだ。

 動揺は観光施設にも広がった。同市柄倉の「江戸ワンダーランド日光江戸村」はGoToが追い風となり、10、11月の客足が前年同月より2割ほど増えていたという。「宿泊予約がキャンセルとなれば、うちのお客さまも減る」と政田光春(まさだみつはる)広報部長(45)。「先行きは不透明。臨機応変に営業していくしかない」

 19日に冬季オープンを控える那須町大島のスキー場「マウントジーンズ那須」の土屋稚史(つちやまさし)支配人(49)も「GoToで例年以上の客入りを期待していたのに」とため息をつく。9~11月の紅葉ゴンドラ営業期間中、地域共通クーポンの利用者は多かったため、年末年始はそれ以上の客足を見込んでいた。「観光全体の自粛が加速してしまう。国や自治体には、しっかり支援してほしい」と願った。

 GoToを使い元日に日光市内の旅館を予約していた宇都宮市南大通り1丁目、大学2年萩原愛(はぎわらあい)さん(19)は14日夜、慌ててキャンセルした。「残念だけど、GoToがないと旅費が上がってしまう」としつつ、「マスクを着けない日常に戻りたいので、一時停止は仕方ないかな」と受け止めた。