思い出の曲で認知症ケア 米国発M&M、佐野のNPOが実践

 佐野市のNPO法人「エコロジーオンライン」(上岡裕(かみおかゆたか)理事長)は10月から、認知症の高齢者に携帯音楽プレーヤーのiPodで患者の好みに合わせた音楽を聴かせ、過去の記憶を取り戻そうとする認知症ケア「ミュージック&メモリー(M&M)」を同市などの高齢者福祉施設4カ所で始めた。M&Mはアメリカ発のプログラムで、アジアでは初の取り組み。今月25日にはM&Mを題材にした映画の上映会を同市で開く。

 音楽はすでに高齢者向け介護施設でレクリエーションとして取り入れられているが、グループ活動だったり、楽曲が個人の好みに合ったものでなかったりする。

 M&Mは個人の思い入れのある曲をダウンロードして聴かせることで、当時の記憶を取り戻そうという音楽療法。2006年にアメリカの非営利組織「ミュージック&メモリー」が始めた。アメリカでは患者のコミュニケーション能力向上や抗不安薬などの薬物の使用減少といった成果が見られ、19の州政府が公的な政策として位置付けているという。現在12カ国で実施されている。

 今回は3カ月間のパイロット事業で、寄付やクラウドファンディングで資金を集め、iPodやヘッドホンを用意。同市などで高齢者向け介護施設を運営する医師松永安優美(まつながあゆみ)さんが協力し、特別養護老人ホームなどで75~97歳の認知症高齢者6人を対象に実施している。

 佐野市のサービス付き高齢者向け住宅「悠楓園」では、重度認知症の女性2人が参加。意思疎通が困難で、食事にむらがあった女性(97)は、昔親しんだ唱歌や童謡9曲をほぼ毎日30分~1時間聴いている。職員は「発語が増え、笑顔を見せるなど表情が豊かになった。おやつも完食できる時がある」と変化を実感する。女性は聴きながら歌を口ずさんだり、オルガンを弾くしぐさを見せたりもする。不安になると落ち着かなくなるという女性(75)も、笑顔が増えたという。