
1990年代初頭のバブル崩壊後の就職難に遭った「就職氷河期世代」を対象とした各省庁共通の国家公務員中途採用試験が29日、東京や大阪、名古屋など全国の9都市で行われた。人事院によると、この日は全国で計5634人が受験。採用枠は157人で、倍率は約36倍となった。政府は国家公務員の中途採用枠で氷河期世代の重点採用を打ち出しており、各省庁共通の試験は初めて。国家公務員採用で先行事例を示すことによって民間企業への波及効果を狙う。
氷河期世代は就職難から新卒時に正社員になれず、現在も意に沿わないまま非正規労働を続ける人が多い。このまま高齢化すると生活保護など社会保障費の増大につながるため政府が昨年から支援に乗り出している。
募集職種は一般行政事務のほか、技術的業務従事者、刑務官、入国警備官。この日の試験は基礎能力テストと作文が実施され、新型コロナウイルス感染防止策として試験時間中のマスク着用を義務付けた。
東京都武蔵野市の会場で受験した宇都宮市の非常勤公務員の男性(43)は「収入が少なく身分も不安定。なんとか受かりたい」と意気込んだ。東京都立川市の女性(47)は「もう若いとはいえない年齢となった。政府の支援は遅すぎたように感じる」と述べた。
受験資格は1966年4月2日~86年4月1日に生まれた人。面接を伴う2次試験は来年1月下旬~2月上旬に志望先の省庁で行われ、2月25日に合格者を発表。勤務開始は3月以降となる。
政府は昨年12月、国家公務員の中途採用を含む氷河期世代支援のための総合的な行動計画をまとめた。非正規雇用や無職、引きこもり状態にある100万人を集中的に支援し、30万人を正規雇用に転換させるのが目標で、3年間で650億円超の予算を確保した。