施設の消毒作業をする小西さん。コロナ禍で負担が増している介護業界の地位向上を政治に託す=宇都宮市宝木本町の特別養護老人ホーム「宝寿苑」

 15日投開票の栃木県知事選に向け、介護の現場に携わる有権者も一票を手に候補者の政策を注視している。新型コロナウイルスの重症化リスクが高いお年寄りのケアに緊張を強いられる中、介護士は人手不足など、労働環境の改善を政治に期待する。

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 「職員としてずっと胸が痛かった。家族の力って大きいんです」。宇都宮市宝木本町の特別養護老人ホーム「宝寿苑(えん)」。介護士小西真美(こにしまみ)さん(39)はそう振り返る。利用者と家族の面会はタブレットの画面越しでしかできなかった。今月に入ってやっと、条件付きで個室の面会が可能となった。「職員には見せない笑顔」を見ると、日々張り詰めた緊張も多少ほぐれる。

 コロナ対策による負担増で、介護関係者には慰労金が出たが、人手不足や労働環境の問題はどの施設もいっそう深刻化しているという。人材育成に十分な余裕がない。人手不足、労働環境悪化、若い人が業界に魅力を感じられない、という悪循環に危機感が募る。

 「人間と向き合う専門性が求められる仕事なのに、まだまだ介護は社会的に医療の下とみられていることも根本にあるのでは」。夜間に利用者が起きたら感知するセンサーといった、人手不足を補うICT技術導入の促進など、政治に求めたいことはいくつもある。

 「業界の地位向上、変える本気がある人に投票したい」と15日を見据える。

 佐野市のNPO法人「風の詩」が運営するデイサービス施設で、ボランティアとして活動する男性(58)。3年ほど前に若年性認知症と診断され、会社を辞めた。生活相談のために同法人とつながり、誘われてボランティアを始めた。利用者との交流や施設の掃除などを通じて業務を支える。

 今までできたことができなくなる不安は大きい。周囲のスタッフの寄り添いに支えられ、誰かを支えている。

 認知症になる前は無縁だったという介護の世界。介護職員の待遇改善の必要性も、実感するようになった。新たな知事には「介護の現場を少しでも見に来てほしい。利用者やスタッフの思いに耳を傾けてもらえればいい」と望んだ。