「おやじにもぶたれたことないのに!」。放映開始から40年以上たった今も人気を誇るアニメ「機動戦士ガンダム」の主人公アムロのせりふだ。ぶった上官が反論する。「殴られもせずに一人前になったやつがどこにいるものか!」▼当時中学生だった筆者は、何の違和感もなくこの場面を見ていた気がする。先日、子ども虐待防止ネットワークとちぎなどが開いた集いで、このせりふを久々に聞いた▼ことし4月、親がしつけの名目で体罰を加えてはならないとした改正法が施行された。だが、たたくことを肯定的に捉える考え方はアムロが叫んだ頃と同様、国内に根強く残る▼集いには、虐待を受けて育った若者3人が登壇した。「ご飯を与えられず手足を縛られた」「機嫌が悪いと手当たり次第物を投げてきた」「殺されると思った。(親を)殺すしかないと兄弟で話した」▼淡々とした口調とは裏腹に、心が凍るような体験だった。続く発言が胸を締め付ける。「それが普通だと思っていた」「自分のせいだから仕方ないと感じてた」。心の中でSOSを発しながらも、子どもたちには逃げ場がないのだ▼学校や近隣の住民など周囲が気付かないことには救えない。「周囲はもっとおせっかいであってほしい」。福田雅章(ふくだまさあき)主催者代表の言葉が心に響く。11月は児童虐待防止推進月間。