宇都宮の旧家が保有する絵巻に描かれた江戸末期の二荒山神社の菊水祭はさながら、東京ディズニーランドのパレードのようだ。趣向を凝らした豪華な山車や屋台など80を超える出し物がまちを練り歩き、町衆の熱気が伝わってくる▼江戸の天下祭に比肩すると称された。城下町や宿場町として栄えた宇都宮の各町が競って造り、文化を育んだ証しでもある。だが今、その面影はない▼1936(昭和11)年以降巡行が途絶えた上、空襲で多くが焼失し、一部は市外に売却された。だが、市民の記憶からも消えてしまうのはあまりに寂しい。立ち上がったのが、市民有志による「宮のにぎわい 山車復活プロジェクト」だ▼蔵などの片隅に眠っていた部品を元に9年間で3台を復元。現在は日本武尊(やまとたけるのみこと)と龍を頂く山車を来秋の祭りで披露すべく、修復と膨大な費用の工面を進める▼「突っ走るだけ。本気で走りだしたら、後から(人やお金は)ついてくる」と事務局の田巻秀樹(たまきひでき)さん(72)。メンバーの壮大なロマンがプロジェクトを支える▼次なる課題は、都市化が進んだまちなかで、巡行を支える人材をいかに育てるか。理事の池田貞夫(いけださだお)さん(72)も「山車はお祭りで使わなければ残らない」と口をそろえる。絵巻のように住民が喜び勇んで地域の宝を引いてこそ、真の復活と呼べるのだろう。