紅葉が始まった10月に車で奥日光を訪れた。中禅寺湖畔沿いの道を走ると、赤黄色に染まった落葉樹の葉を通して秋の光が車内に落ちてくる。コロナ禍など何もなかったように木々は美しい。

 「Go To キャンペーン」の影響か、擦れ違う車も他県ナンバーが目立つ。湖や滝、湿原、大使館別荘、ボートハウスにも観光客やハイカーの姿がある。1カ月前のまばらな避暑地がうそのようだ。人けが無い晩夏の湯ノ湖へ、釣りに行った時を思い出す。青い空や雲、そして山々が水鏡のように湖面に映り、静寂な時間が流れていた。

 コロナ禍は世界中で大きな被害を与え、人間の無力さを痛感させた。人々の生活がこれほどの影響を受けたのに、自然は何も無かったように四季折々の姿を見せてくれる。県立博物館の星直斗(ほしなおと)学芸員(49)は「紅葉はさまざまな葉が移ろいながら美しい色を変える。それが人生のようで人の心に余韻も残す」と言う。

 車は竜頭の滝を抜け戦場ケ原に向かう。マスク姿で運転する車外の世界は、やはり美しかった。