プロ野球で今、走るたびに喝采を浴びているのがソフトバンクの周東佑京(しゅうとう・うきょう)選手だ。13試合連続盗塁を達成し、プロ野球記録を46年ぶりに更新した▼野球には正岡子規(まさおか・しき)が名付けた死球をはじめ、併殺、刺殺など少々物騒な用語が多い。英語の「Stolen Base」を訳した盗塁もその一つ。“盗”は不適切とあらぬ誤解を招いてきた▼明治の終わりに「武士道」の著者で、一高校長の新渡戸稲造(にとべ・いなぞう)は「野球は巾着切り(すり)の遊戯」と断じた。「塁を盗もうなどと眼を四方八方に配り神経を鋭くしてやる遊び。剛勇の気なし」。1943年に盗塁は「奪塁」に言い換えられた。戦時下に盗むと何事か、と陸軍の指示だった▼新渡戸の論とは逆で、盗塁は野球で最も勇気が必要なプレーとされる。盗塁の重要さが増す中、他球団にもスピード自慢の選手がいる。ロッテの和田康士朗(わだ・こうしろう)選手は高校で陸上部、巨人の増田大輝(ますだ・だいき)選手は元とび職。周東選手と同じ育成契約から一芸を武器にはい上がった▼日本ハムからドラフト指名された中央大の五十幡亮汰(いそばた・りょうた)選手(佐野日大高出)は、陸上の全国中学校大会で現在日本最速のサニブラウン選手に勝った男。どれだけ速いのか、わくわくさせる▼多士済々の「いだてん」が駆け回り観客の目をくぎ付けにする。本塁打や剛速球に負けぬ野球の魅力だ。