グルメで名高い池波正太郎(いけなみしょうたろう)の代表作「鬼平犯科帳」に、タニシに関する記述が出てくる。「水田や池沼にすみ、冬は泥中に隠れているが、水ぬるむ頃にはい出してくる。これをゆでてむき身にし、葱(ねぎ)をあしらい、ぬたにしたものは…」▼タニシを食した経験があるか記憶は定かではないが、この一文を読むと酒肴(しゅこう)で味わってみたくなる。県内の水田などに生息するマルタニシが主に食用になるという▼海なし県の本県にはタニシのほかカワニナ、モノアラガイなど150種の貝が生息。このうち117種はカタツムリが占めると、県立博物館で開会中の企画展「貝ってすてき!」を見て初めて知った▼同館の南谷幸雄(みなみやゆきお)さんによれば、長さ20センチにもなるカラスガイは意外にも絶滅の恐れがあるという。約40年前を最後に県内では姿を消したと見られていたが近年、渡良瀬遊水地で発見された。地味な二枚貝だが、生き延びていて本当によかった▼企画展は「美しさ」「おいしさ」にも焦点を当てた。美しさではタカラガイとイモガイが双璧だろう。フィリピンの深海で採れる光沢のある美しい模様にひかれるコレクターは数多く、数百万円で取引される物もあるそうだ▼美味で言えば旬を迎えるカキは生でも鍋でもフライでもすこぶるうまい。企画展の帰りは居酒屋に直行というのもお薦めだ。