「とにかく犬が好きだから」と語る池上さん

 政府が2日付で発表した2020年秋の褒章で、栃木県関係は11人が受章した。商業、工業などの業務に尽力した黄綬褒章に6人、社会福祉などの分野に功績のあった藍綬褒章に5人。警察犬指導員として歩み続け、黄綬褒章(業務精励)を受章した下野市、池上行雄(いけがみゆきお)さん(71)に思いを聞いた。

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 50年間にわたって警察犬を中心とした大型犬の訓練に向き合ってきた。「毎日の訓練が犬との信頼関係を築く。指示したことを99%ではなく100%できるようにしたいからね」。犬だけではなく、訓練そのものを愛してやまない。

 幼少期から、大型犬のシェパードがいる家庭で育った。小学生のころに愛犬をしつけたのが指導員の“原点”だ。訓練した犬の魅力は「人にできないことをやってのけてしまうこと」だという。

 ある殺人事件では、現場に残された遺留品の臭いを頼りに約2キロ先の駅まで行き、その後の容疑者逮捕につなげたこともあった。「犬を信じ切ることが大切だから」と振り返る。

 県警からの出動要請は9割が夜間といい、凶悪事件や行方不明者の捜索などさまざまな事件に関わってきた。

 ここ数年は現場を若手訓練士に託し、後進の育成にも力を注いでいる。県外から預けに訪れる飼い主も増えた。手塩にかけた犬は約300頭で、中には警視庁管内や成田空港の税関で活躍する犬もいる。

 訓練所の所長を務めて半世紀。「区切りの年に章を頂けたのはうれしいね」。柔和な笑みを浮かべながら、遠慮がちに喜んだ。