沢木耕太郎(さわきこうたろう)さんは著書「旅する力」で、旅の目的についてこう記している。「大事なのは『行く』過程で、何を『感じ』られたか」だとして「目的地に着くことよりも(中略)行き交う人をどう感受できたかということの方がはるかに大切」と▼沢木さんの不朽の名作「深夜特急」を読めば、そのことがよく分かる。異国への旅は景色やグルメよりも異文化に生きる現地の人々との交流にこそ妙味がある▼このコロナ禍で海外旅行は当面、望むべくもない。だが異文化には県内でも容易に触れ合える。先日、宇都宮市内で開かれた県主催の「とちぎ多文化共生フォーラム」を聞いて改めて実感した▼講師のネパール出身のルイテル・マヘスさん(34)は来日12年目。栃木市で人材派遣などを手掛ける会社を営んでいる。多文化共生社会を築くために重要なのが「互いに文化的違いを認め合い、対等な関係を築く」ことだという▼「ルールを間違えた外国人を見掛けたら怒らないで優しい日本語で教えて」「互いに笑顔であいさつし顔を覚えよう」などと呼び掛けた▼外国人に住みやすく選ばれる地域であれば、結果的に経済の活性化につながっていく。地域住民にとっても、居ながらにして異文化と触れ合えて、人間の幅が広がるという特典が付く。まずは隣の外国人に話し掛けてみよう。