寺社巡りの醍醐味(だいごみ)の一つに庭園鑑賞がある。枯れ山水や池泉回遊式など様式は数あれど、共通するのはビロードのようなコケの美しさ。近頃はガラス容器で栽培するコケのテラリウムも人気を集めている▼樹皮などに張り付く地衣類に焦点を当てた講演会が先日、宇都宮市南図書館であった。長い間、コケは地衣類の一種と思い込んでいたがさにあらず。講師の県立博物館の坂井広人(さかいひろと)さんによればコケが植物であるのに対し、キノコと同じ菌類で分類上は動物に近いというのだ▼だが、ややこしいのは地衣類の多くの名にウメノキゴケやマツゲゴケなどコケが付いていることだ。同じコケでも植物は漢字だと「苔」だが、地衣類は「木毛」と表す。木の表面に毛のように張り付く特徴かららしい▼全国でも研究者は100人程度。樹皮はおろかコンクリートや岩肌にも生え南極や高山にも分布する。地味な生き物だがその生命力が魅力と坂井さんは指摘する▼最大の特徴は植物である藻類との共生にあるという。生息場所を提供する地衣類と、光合成で作り出した養分をもたらす藻類。まさに共生の典型である▼坂井さんによれば共生という言葉は地衣類の学者が使い出したとか。コロナ禍に多発する自然災害。多難な現代社会を生き抜くのに欠かせない共生のありようを地衣類に学びたい。