シャガールやスーラなど、サーカスに題材を求めた画家は多い。スリリングな芸やきらびやかな衣装、そして会期が終わればこつぜんと姿を消す非日常性が彼らを魅了したのだろうか▼新型コロナウイルスのまん延で、サーカスがもたらす興奮とは全く別物の、想定もしなかった非日常が続く。国内有数のサーカス団であるポップサーカスも2月末、宇都宮公演が期間途中で休止となり、今も足止めを余儀なくされている▼通常なら2カ月ほどで次の地へ移動する。こんなに長くとどまるとは夢にも思わなかったに違いない。その一座が、来春に同地で公演を再開する方針を決めた。具体的な日程こそ未定だが、明確な目標を掲げ次なるステップに向け動きだした▼団員は14カ国から集まった約70人。うち半数が、コロナ禍で帰国できなかったり、母国に帰るより安全などとしてとどまった。巨大テントの裏に並ぶトレーラーハウスで、大家族のように身を寄せ合って暮らす▼収入はほぼ途絶えたが、手に汗握るアクロバットを特徴とするだけに、ちょっとした緩みが命取りになる。技が鈍らないよう、団員は日々、テントの中で厳しい訓練を続ける▼サーカスの幕が再び開く頃は、事態が収束していると思いたい。非日常を心から楽しめる春が一日も早く来ることを願わずにいられない。