食用として出荷される養殖アユ。一部は冷凍として在庫に回される=23日午前、さくら市早乙女

 新型コロナウイルス収束の兆しが見えず県内の観光業や飲食業がいまだ影響を受ける中、アユを生産する県内の養殖業者もその余波を受けている。旅館や料亭などが営業自粛や短縮営業を余儀なくされたことで、最盛期の夏場に売り上げが前年から半減。出荷できなかった魚は冷凍して在庫にせざるを得なくなっており、関係者は来年に向け生産量の調整やコストカットなどを検討している。

 2019年の農林水産省の統計では、本県の養殖アユ生産量は国内4位(310トン)で全国有数のアユ産地でもある。8月から県漁業協同組合連合会アユ種苗センターで人工ふ化が行われ、稚魚は年末から翌春にかけて県内の養殖業者などに出荷。養殖業者が成魚に育てて旅館や料亭、観光やななどに食用として提供するほか、釣り用に各河川の漁協が放流したりオトリアユとして販売したりしている。

 県養殖漁業協同組合によると、昨年の台風19号での水害やコロナ禍による釣り客減少で漁協や養殖業者は厳しい運営を強いられ、今年県漁連から購入したアユの稚魚は約524万匹と昨年(約730万匹)より3割減少。さらに外出自粛によって観光施設や飲食店への出荷量が、昨年の半分程度にとどまっている。

 主に食用のアユやサクラマスなどを扱う荒川養殖漁業生産組合(さくら市早乙女)では、アユが旬を迎える初夏から8月に出荷のピークを迎える。しかし今年は外出自粛などの期間と重なったため、3~7月の売り上げが前年の5割前後まで落ち込んだ。

 国の「Go To」キャンペーンで観光地に多少客足が戻ったことや、県と県養殖漁協が県内小中学校の給食にアユなどを提供する「地産地消元気アップ水産物給食推進事業」によって、9月以降の売り上げは前年並みに戻りつつある。

 それでも全体の売り上げは前年に遠く及ばず、大きな痛手に変わりはない。その上、夏場に出荷できなかったアユが多く残っているため、在庫が例年の3~4割増えると見込んでいる。

 荒川養殖の塩野哲男(しおのてつお)組合長(68)は「東日本大震災の時も大きなダメージを受けたが、コロナの収束が見通せないことには自助努力だけではどうにもならない。生産量を抑えたりコストカットしたりしながら、踏ん張るしかない」と吐露した。