国と市が開いた、防災集団移転や霞堤の整備に関する住民説明会=23日午後、那須烏山市下境

 国交省と那須烏山市が23日の住民説明会で提示した防災集団移転案や、霞堤の概要。対象の那須烏山市下境地区は、過去に繰り返し浸水被害を受けてきただけに、住民からは「ようやく話がきけた」と安堵(あんど)する声が上がった。一方、生活や地域のつながりにも大きな影響をもたらす集団移転は、検討の俎上(そじょう)に載ったばかりで霞堤も具体像までは見えてこない。「まだまだ分からないことが多い」。安全に暮らせる地域の将来へ向け、不安も募る。

 「開くのが遅すぎる」。説明会に参加した男性(69)はため息をつく。集団移転が検討されていることは、報道で知った。「やっと国や市から説明を聞けたが、霞堤の効果はまだ疑問が残った」と話す。

 男性宅は昨年10月の台風19号で、床上浸水の被害に遭った。「集団移転は賛成。家が浸水するのはもうたくさん」と吐露する。

 説明会には計111人が足を運んだ。同地区では1986年の茂木水害、98年の那須水害、台風19号と浸水被害が繰り返されてきた。

 別の男性(70)は「集団移転をするにしても、どの家が対象なのかや全額保証してくれるのかなど、まだ分からないことも多いから不安が残る」と明かす。

 移転先について市は、同じ下境地区内を検討しているとみられるが、十分な土地はあるのか、疑問を持つ。「台風19号で被災した家だけが移転した場合、対象にならない家が孤立してしまうのではないか」。安全と地域コミュニティーの維持に複雑な心境も明かした。

 「何のための集まりだったのか」。他の回に出席した男性(71)はいらだつ。霞堤を整備したらどのくらいの範囲に水が入ってくるのか、集団移転を実施するなら何年後になるのか-。具体的な答えはなかったという。「下境に水をためれば下流の地域が助かるとはっきり言ってもらえれば納得できるのに」とふに落ちない様子だった。

 国や市の担当者は、住民への丁寧な説明や意向の把握を徹底していくと何度も言及した。下境自治会の小室信行(こむろのぶゆき)行政区長(70)は「住民ごとに被災の事情や(国や市が進める)対策への知識も異なる。行政側の意向も分かるので、一方的にならず、地元の意見を丁寧に把握して進めてほしい」と注文した。