人工巣塔で子育てに励むコウノトリの「歌」(左)=7月3日、小山市内

 県は14日、骨折した左脚の切断手術をした国の特別天然記念物で雌のコウノトリ「歌」が同日午前、県の飼育施設内で死んだと発表した。衰弱死と推定される。歌は今春から小山市の渡良瀬遊水地に定着して産卵し、2羽のひなを巣立たせた母鳥。先月末に左脚のけがが確認されたため、今月8日に小山市などが捕獲し、県が保護していた。

 県自然環境課によると、12日に行われた手術後、自ら餌を食べようとしなかったため、飼育員がくちばしを開けて餌を流し込んでいた。13日は朝に与えた餌を昼に吐き出し、息が上がるような様子が見られた。同日午後には抗生物質投与などの治療が行われたが、14日午前8時20分、出勤した飼育員がケージ内で死んでいる歌を発見した。

 歌は徳島県鳴門市生まれの2歳。昨夏、雄のひかるら4羽で遊水地に近い小山市下生井の休耕田に飛来した。ひかるとは今春つがいになり、4月下旬に抱卵が確認されると、巣を観察できる遊水地の堤防には8月初めのひなの巣立ちまで、連日多くのカメラマンが訪れた。

 コウノトリ野外繁殖は1971年の国内絶滅後、東日本で初めて。2歳の雌の卵がふ化した事例は国内で初めてだった。

 小山市の浅野正富(あさのまさとみ)市長は、民間人としてコウノトリの野生復帰に長年取り組んできた。「術後の2、3日はひとつの山だとは聞いていた。本当に残念なことに、そこを乗り越えられなかった」と死を悼んだ。その上で、今後コウノトリに事故があったときにどう対応するのか、関係機関でマニュアルを整備するべきだとの認識を示した。

 地元の写真愛好家で「渡良瀬遊水地見守り隊」代表の平田政吉(ひらたまさきち)さん(72)は「歌が最後に保護された場所に、ひかるが毎日来るんです。哀れで仕方がない」と涙ぐんでいた。