思川の氾濫時、少しでも本社を守るためにかさ上げした駐車場=6日午前、鹿沼市

この1年の思いを語る横尾社長=6日午前、鹿沼市

思川の氾濫時、少しでも本社を守るためにかさ上げした駐車場=6日午前、鹿沼市 この1年の思いを語る横尾社長=6日午前、鹿沼市

 昨年の台風19号により、鹿沼市粟野地区は思川が決壊し、精密金属部品加工の横尾製作所(鹿沼市口粟野、横尾敏行(よこおとしゆき)社長)は甚大な浸水被害を受けた。発災から1年を迎え、自然災害への対応を強化する一方、コロナ禍で一部部品の受注が落ち込んでおり、復旧後も新たな課題に取り組む。

 事業の全面再開を半年先と想定していたが、約3カ月早く復旧にこぎ着けた。「社員、取引先、支援をいただいた多くの方に感謝したい」と横尾社長(58)。ただ堤防など治水対策は道半ば。「気象警報や台風発生が報じられるとドキドキする。トラウマ(心的外傷)になっている」という。

 雨期前の4月には本社移転も真剣に検討したが、「いま思えば、コロナの影響もあり、とてもそのような状況ではなかった」。そこで5月に決壊した堤防側にある駐車場約1200平方メートルを高さ1メートルほど土盛りした。増水予想時は仮堤防と土盛りの間をフレコンバッグ土のうでふさぐ考え。

 一方で「コロナでどこ(の精密部品加工会社)も影響を受けているかもしれないが、当社も受注が減り、新規事業の取り組みに動きだした」。部品加工だけでなく、特殊な組み立てまで行う完成品製造に乗り出し、組み立て業務を受注し始めた。「まだ賞与などは元には戻らないが、社員も協力してくれ、何とか還元していきたい」と収益改善を目指す。

 ただこの間、悔やまれることがあった。

 昨年9月、「ものづくりが好き」という県立工業高を卒業予定の女性に採用内定を出した。しかし直後に甚大な浸水。学校から問い合わせがあったが、「あの時は『大丈夫です』と言えなかった」と悔やむ。

 「半年後は社員を休ませるような状況があることも予想され、内定を取り消した。今思えば、復旧も早く、心残りだ」と明かす。

 このため、今後は新規事業の成長を図るとともに、会員制交流サイト(SNS)での情報発信を強化し、人材確保にも注力していく。