被災経験を踏まえ廊下のロッカーなどを撤去し、垂直避難に備えるとちのみ学園の2階=8日、佐野市小中町

 水害で浸水する恐れがある福祉施設などのうち、法律で義務付けられた避難計画を作成した施設は8月末現在、栃木県内全体で74.3%に上ることが、9日までに分かった。全25市町が下野新聞社の行ったアンケートに答えた。作成率は昨年3月末時点から、約17%上昇した。台風19号による災害発生から、12日で一年が経過。頻発する大規模災害が契機となり、施設での備えが加速している。

 高齢者や障害者施設、学校や幼稚園、医療施設など、主に防災上の配慮を要する人々が使う施設を「要配慮者利用施設」と呼ぶ。このうち、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域内にあり、行政が地域防災計画に位置付けた施設は2017年6月、避難計画作成が法律で義務付けられた。

 25市町のアンケートの結果、計画作成の対象施設は県内21市町に974カ所あり、724カ所が作成済み。宇都宮市は対象93カ所、小山市は同35カ所で全て作成を終えた。矢板、市貝、高根沢、那珂川の4市町には対象施設がないが、台風19号を受け県内河川の浸水想定区域などが広がるのに伴い、対象施設が今後生じる見込みだ。

 国交省のまとめによると、昨年3月末時点では県内17市町の対象施設817カ所のうち467カ所が作成済みで、作成率は57.2%だった。

 主に知的障害者を支援する「とちのみ学園」(佐野市小中町)は今春、避難計画を作成した。台風19号では付近の旗川があふれ、床上浸水に遭っていた。

 被災時は夕方、事業継続計画(BCP)に基づき利用者約100人を2階に避難させ難を逃れた。ただ障害の状況に応じた避難方法や場所の確保に苦慮したことから、計画作りを通し、よりきめ細かな避難方法を考え、必要な物資を2階で備蓄するなどの改善に取り組んだという。

 横塚直子(よこづかなおこ)副施設長(66)らは「けが人を出さず無事避難できたのは幸運。職員が少ない深夜ならうまくいったかどうか」と話し、「災害は人ごとではない」との意識を強くしている。

 災害法制に詳しい静岡文化芸術大の村中洋介(むらなかようすけ)講師(公法学)は「避難計画は防災上の指針となる。被災経験のない施設も災害をわがことと捉えていくことが重要。行政は施設に丁寧に寄り添い、作成を促してほしい」としている。