台風19号の被害から1年。店を改装し、再スタートを切った栗原さん=8日午前、佐野市赤坂町の理美容室「ヘアールームピアラ」

 台風19号による災害発生から1年の経過を前に、栃木県内でも、ようやく落ち着いた生活を取り戻す人たちがいる。浸水で半壊被害に遭った佐野市の理美容室は9月下旬、リニューアルオープンにこぎ着けた。水害の苦労から再起し、前を向き始めている。

 今月8日午前、店名を示す真新しいロゴがやっと店内に設置された。「初心に戻ってリスタートです」。佐野市赤坂町の理美容室「ヘアールーム ピアラ」の栗原孝夫(くりはらたかお)さん(52)が、妻雅代(まさよ)さん(49)にほほ笑んでみせた。

 昨年10月12日夜、70センチの高さまであっという間に浸水した。床下にある移動式シャンプー用の設備から水が噴き出したのを見て「だめだ」と覚悟した。

 建物に加え、1台100万円のいす4台、パーマやエステの機器、洗濯機、車、そして泥だらけの店内-。「ものだけじゃなく、お客さまとの思い出とか、そういう喪失感が大きくて」

 店を徹底洗浄し、いす1台を借りるなど最小限の設備で同月末、何とか営業を再開。さまざまな復旧の補助金が活用できることもあり、店を一時閉め、全面改装することにした。

 改装中、かろうじて床下浸水で済んだ実家の理容室(同市大橋町)で仮営業を続けたが、さらに新型コロナウイルスの波が来た。思うように建材や人の手配が進まず、リニューアルオープンにこぎ着けたのは9月26日だった。

 「なぜうちが」。そんな被災の失意を決意に変えてくれたのはお客の存在。被災直後から数多くの人が店を心配し、励まし、物心両面で支えてくれた。

 オープンして20年以上。地域に根ざした個人店として、一人一人丁寧に向き合うやり方を大切にしてきた。災害の困難の中、信頼という財産は確かにあった。「いろいろな人に助けてもらった分、頑張って走り続けます。これから恩返ししないと」