清掃を続ける菅原さん。「見守っててね」と手を合わせる

 2004年9月、幼い兄弟が栃木県小山市の思川に投げ落とされて殺害された虐待死事件で、2人を供養するため河川敷に置かれた「兄弟地蔵」の清掃を続ける市民がいる。同市西城南4丁目、元民生委員の菅原清子(すがわらきよこ)さん(75)。悲劇から16年。「今の子育て世代にも事件があったことを知ってほしい」と願って活動するが、高齢による限界も感じ始めており、後を継ぐ人が現れるのを心待ちにしている。

 小林一斗(こばやしかずと)ちゃん=当時(4)=と隼人(はやと)ちゃん=同(3)=の兄弟は、同居の男に虐待を受けた末、旧間中橋から夜の冷たい川の中に投げ落とされ、命を奪われた。

 2体の地蔵はその後、現場近くの河川敷に匿名の人物によって別々の時期に設置された。現在は新間中橋下流の思川左岸の堤防上に移され、散歩などで通る市民が手を合わせている。

 菅原さんが清掃を始めたのは同年12月。植栽活動で堤防上に植えた思川桜の隣が、兄弟をしのぶために植えられた桜の木だったことがきっかけになった。

 「何かの縁だ」。その後、民生委員の仲間4人を誘い、9月12日の命日やクリスマスなどの節目に、桜の近くにある地蔵の清掃を行ってきた。「2人が寂しくならないように」と、季節ごとに供える花も変えた。

 仲間は年齢を重ねるにつれて続けることが難しくなり、現在は主に菅原さんが1人で清掃に励んでいる。幼い子どもへの虐待が全国で後を絶たない中で、「事件を風化させたくない」との思いが原動力だ。

 歳月が流れ、市内の若者や子育て世代には事件を知らない人たちも増えた。

 「あんな残酷で悲惨な事件はない。忘れないでと呼び掛けたい」。菅原さんの思いは切実だ。

 だが、年齢を重ねるにつれて脚が悪くなり、通院の機会も増えるなど体の不調が目立ってきた。「いつまでできるだろうか」。葛藤を抱えつつも、「手伝ってくれる人が現れたら心からうれしい」。いちるの望みを絶やさずに、兄弟地蔵の元へ足を運ぶ。