数滴の血液で病気に関わる200種類の検査ができる-。こんな触れ込みで巨額の資金を集めた米医療ベンチャー「セラノス」は、実際にそんな検査ができないことが2015年に明らかになって廃業に追い込まれた▼19歳だった03年に大学を中退し、セラノスを設立した創業者のエリザベス・ホームズ氏。アップル創業者の故スティーブ・ジョブズばりのカリスマ性でメディアの人気者となったが、詐欺罪で訴追された▼近所の薬局で指先から採血し、専用容器に入れて小型装置で分析すると安価に検査できる。“魔法”のようなアイデアだった。ところが実態は違った▼最初に報じた米紙ウォールストリート・ジャーナルの記者の著書「BAD BLOOD」によると、装置はうまく働かず、多くの人は注射針で採血して別の企業の装置で分析した。誤ってがんと診断されるなど結果も不正確だった▼ホームズはセラノス設立前にシンガポールの研究所でインターンを務めた。「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の検査を手がけ、従来の検査を簡便化できないか考えたという。少なくともニーズを見抜く眼力は確かだった▼今は新型コロナウイルスの不安が世界を覆う。魔法のように効く治療薬やワクチンへの願望も根強い。「第二のホームズ」を生み出さないように用心したい。