若い時分、ジャズ喫茶に通っていた。ジョン・コルトレーンなどの名盤を難しそうな顔をつくって聞き入るのが流儀だった。決まってブラックコーヒーを注文した▼きょう1日はコーヒーの日。世界最大の生産国ブラジルの栽培時期に合わせ、コーヒー年度がこの日に始まったことから、全日本コーヒー協会が1983年に普及を目的に制定した。秋冬の需要期を控えてとの意味もあった▼宇都宮市陽東3丁目でコーヒー豆の小売店「チバコーヒー」を営む千葉公次(ちばこうじ)さん(48)は、全国の焙煎(ばいせん)競技大会で上位入賞を果たした腕前の持ち主だ。生の豆の焙煎は、酸味が強く出る浅いりから、苦みをより感じる深いりまで8段階ほどあるという▼ドリップやサイホンなどの抽出も重要だが、焙煎のありようで味が大きく変わる。「豆の量や収穫時期などを考慮して加減するのが難しいんです」と千葉さんは話す。家庭でもできるが根気が必要だという。ここはプロに任せた方がよさそうだ▼「日常からほんのちょっとした非日常へと意識を移すにあたって、一杯のコーヒーは効果を発揮している…」。作家の片岡義男(かたおかよしお)さんはその効能をエッセーで説いた▼コロナ禍で多くの人が、様変わりした日常に疲れ切っている。この日は中秋節でもある。コーヒーと名月で気分を変えてみるのも悪くない。