兄恒資さんの通門証などを受け取る弟の益子佐さん(左)

 栃木県大田原市黒羽図書館に収蔵されている1964年の東京オリンピック公式報告書「第18回オリンピック競技大会」の本の中から見つかった選手村通門証の持ち主を捜していた同館に16日、記載されていた男性の家族が名乗り出て、通門証と写真2枚が返却された。

 受け取ったのは、旧黒羽町職員だった益子佐(ましこたすく)さん(85)=堀之内。同日、同館が持ち主を捜していることを報じた新聞を見て「兄だ」と驚いたという。

 佐さんは7人きょうだいの末っ子で、通門証の持ち主は長男の恒資(つねすけ)さん。今年5月、一人暮らししていた町田市で老衰のため102歳で他界した。新型コロナウイルス禍で佐さんは葬儀に参列できなかったが、7月、佐さんの家の墓に遺骨を納めた。

 佐さんは「兄は大田原高を卒業し大学に進学。兵隊としてボルネオに行き、一時は捕虜になった。東京五輪の話を聞いた記憶はないが、(通門証に所属先として記載されていた)日本通運勤務時代は忙しそうだった」と振り返る。その上で「本への書き込みはまさしく兄の字。記念になるので、大切に保管したい」と喜んでいる。

 本は、佐さんのおいが寄贈したことも判明。同館サブチーフの荒川千史(あらかわちふみ)さん(58)は「すぐに分かってよかった」。発見者の潮田(うしおだ)さゆりさん(35)は「思い出話も聞けて感無量」と話していた。