昨年まで行われた「天下一関白流神獅子」=宇都宮市逆面町、2017年8月

天下一関白流神獅子を行う予定だった白山神社前に立つ桜井さん=8月下旬、宇都宮市逆面町

昨年まで行われた「天下一関白流神獅子」=宇都宮市逆面町、2017年8月 天下一関白流神獅子を行う予定だった白山神社前に立つ桜井さん=8月下旬、宇都宮市逆面町

 コロナ禍の影響で、栃木県内の郷土芸能や伝統的な祭礼の中止が相次いでいる。演者間の感染や観衆の3密回避が目的だが、今後も中止が続くと既に課題だった「次世代への継承」が絶たれる懸念もある。しかし今後、練習や会場で感染対策を徹底した上でこれまで通り実施できるかは不透明で、関係者は存続に危機感を募らせている。

 「ここで獅子舞を披露するはずでした」。8月下旬、宇都宮市逆面(さかづら)町の白山(はくさん)神社。「逆面の獅子舞愛好会」の桜井基一郎(さくらいもといちろう)顧問(73)は肩を落とした。同市指定無形文化財「天下一関白流神獅子(逆面の獅子舞)」は毎年同15日に行われる。「何日も集まって練習し、当日は汗びっしょりになって演じる。面や衣装を交代で使うので、完全に消毒して行うのは厳しい」とコロナ禍での実施の難しさを語る。

 新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、県内では郷土芸能や祭礼の中止が続いた。3月にはみこしやてんぐ、獅子などの一行が家々を回り、悪魔払いを行う鹿沼市無形民俗文化財「板荷のアンバ様」、5月には「蛇」が地域を練り歩く国重要無形民俗文化財「間々田のじゃがまいた」(小山市)が中止に。「アンバ様」を行う板荷のアンバ様保存会の永井一広(ながいかずひろ)代表(65)は「疫病退散の奇祭なので、こういう時にこそやりたかった」と残念がる。

 県内の郷土芸能や祭礼は、人口減少や生活様式の変化で、消滅したり形態を変えたりしたものが少なくない。「8年前に各地区の当番制をやめて保存会を立ち上げ、住民の負担軽減を図った」と継続の苦労を話す永井さん。県郷土芸能保存協会の会長でもある桜井さんは、小学校などの出前授業で獅子舞を披露、継承への活路を求める。

 しかしいずれも、担い手と観衆が間近に集うことで独特の醍醐味(だいごみ)が味わえる。桜井さんは「中止が続くと技の伝承が困難になるだけでなく、担い手の熱意に影響する。『面倒な行事はなくなってもいい』となれば消滅する」と懸念する。

 現状では、多くの地域で今後郷土芸能や祭礼を実施する見通しが立っていない。県立博物館の篠崎茂雄(しのざきしげお)学芸部長補佐兼人文課長は「担い手が会員制交流サイト(SNS)などで発信する努力をするほか、県民の皆さんにはぜひ関心を持ってほしい。それが担い手の意欲につながり、郷土芸能などの継続につながる」と話している。