豪雨後に建設された砂防ダムを前に「また同じことがあっても被害を抑えられる」と話す渡辺自治会長=4日午後、日光市芹沢

 県内で死者3人、住家浸水5106棟など甚大な被害が出た2015年9月の関東・東北豪雨から10日で5年。土石流が発生し住民が一時孤立した日光市北東部の芹沢地区では、再発防止に向けた砂防ダム建設が終盤を迎えている。地域が日常を取り戻す一方、被災後に地区外へ転出した人もおり、豪雨が過疎を加速させた側面も。この5年の間にも国内各地で災害が頻発する中、地元自治会は避難訓練や研修など、被災を踏まえた自助、共助の取り組みを地道に進めている。

 国土交通省日光砂防事務所などによると、当時、芹沢を含む三依地区は4日間の連続雨量が603ミリに達し、芹沢では7渓流8カ所で土石流が発生し住宅6棟が全半壊した。死者はいなかったが土砂で市道が寸断され、全31世帯56人のうち14世帯25人が一時、孤立状態となった。

 被災後、土砂や流木をせき止めるための砂防ダムの建設が急ピッチで進み、これまでに6基が完成した。現在は最後の7基目が建設中で、21年度には完成見込み。水があふれた沢(芹沢)の護岸工事も並行して行われており、災害の再発防止に向けたハード対策にめどが付きつつある。

 「景色が昔と変わったねぇ、という話は周りの人とする」。3年半前から地区の自治会長を務める渡辺亨(わたなべとおる)さん(65)はダムを頼もしく思う一方、緑豊かな古里に整備された大型建造物に複雑な思いものぞかせる。

 自身も自宅が浸水に遭い、今も1階に畳を入れ直さず、2階だけで生活している。住民には5年前の記憶が鮮明に残っており、雨が降ると「どのくらい降るかなぁ」と不安がる住民から連絡がある。

 地区の人口はこの5年間で5、6世帯、10人ほど減った。自然減のほか、住宅の倒壊など豪雨を機に、地区外の家族宅などへ転居する世帯が相次いだという。「(過疎化は)時代の流れで仕方がないこと。でも、水害がなかったら、こんなに一気にいなくはならなかったと思う」

 自治会内の防災会としてこの5年間、他自治会と連携し避難訓練を毎年実施しているほか、防災への理解を深めようと県外研修も企画するようになった。5年前の教訓は「人任せにせず、自分の判断で動くこと」。住み慣れた地域で皆が安心して暮らし続けられるよう、自分の命は自分で守ることを呼び掛けている。