「病気の治療と仕事の両立は力を入れたいテーマだ」。最長在任期間に加え、持病で2度辞任した宰相として歴史に記録されるであろう安倍晋三首相は、働き方改革に関連し4年前そう言った▼ところが今回、「病気と治療を抱え、体力が万全でない苦痛の中、大切な政治判断を誤る、結果を出せないことがあってはならない」ときっぱり表明した▼確かに日本の歴代首相も、石橋湛山、池田勇人らが病気で職務遂行に支障を来すとなった時点で辞任している。国民の負託を受ける政府のトップは、激務に耐えられなくなれば潔く辞めるのが筋かもしれない。その決断は難しく重い▼ただ、世の中には病気治療に苦しみ、いかに体調が悪くても働き続けたいと望んでいる人たちも多い。例えば、日本人の2人に1人はがんになる。がんになった雇用者の3分の1が依願退職などで仕事を失っている▼それでも30万人超の人は抗がん剤治療の副作用などに耐えながら働き続けている。それは生活費を確保し、医療費を賄うために働く必要があるからだ▼首相の持病の潰瘍性大腸炎は厚生労働省の指定難病。22万人近い患者がいるとされる。「患者を受け入れる社会になって」と訴える彼ら、彼女らは首相の辞任の弁をどう聞いただろう。病気にも仕事にも負けない闘志が揺らがないことを願う。