感謝の思いが詰まった1万円札だった。

 宇都宮市塙田2丁目の認定NPO法人とちぎボランティアネットワーク(とちぎVネット)の事務所に4月中旬、さくら市の40代男性がふらりと顔を出した。寄贈された食品を無料で配る「フードバンク」活動の支援を受ける困窮者の1人だった。

 「お米はある? 調味料は?」。職員の沢根千晴(さわねちはる)さん(48)がいつものように尋ねると、男性は首を振り、照れくさそうに財布から1万円札を取って差し出した。「寄付したいんです。困っていた時、お世話になったから…」。新しい職場が見つかり、その報告で事務所を訪れたのだった。

 数年前に脳梗塞で半身まひとなり、勤めていた職場を離れざるを得なくなった。次の職探しがうまくいかず、次第に困窮した。愛用の電動車いすも故障し、移動のすべすら失った。「苦しい」。とちぎVネットに電話で助けを求めたのは、2015年の師走だった。