PCR検査や入湯税引き上げなどについて話し合った塩原温泉旅館協同組合理事会

 新型コロナウイルス禍の観光モデル「新しい観光のあり方」として、那須塩原市が10月から宿泊事業者へのPCR検査を本格実施する。安全への取り組みを市内外にアピールする狙いだが、宿泊事業者からは陽性確認時の風評被害や財源とする入湯税引き上げによる客離れを懸念する声が消えない。28日には塩原温泉旅館協同組合が市に対する事業見直しの要望を決議。新たな取り組みは生みの苦しみに直面している。

◇「コロナ」感染拡大の経過

 PCR検査は市内の旅館・ホテル従業員のうち約600人に月1回定期的に実施する。1回2、3万円の費用のうち宿泊事業者が1万円を負担。差額を市が補助し、財源として、宿泊客が支払う入湯税を暫定的に200円引き上げる。

 11人が出席した28日の同組合理事会。加盟施設へのアンケートでPCR検査に「半数超」、入湯税引き上げで「7割超」が反対した結果を受けて急きょ開いた。2時間を超える議論の末、渡辺美知太郎(わたなべみちたろう)市長らにPCR検査の見直しと入湯税引き上げの中止を要望することを決めた。

 PCR検査は「陽性が出た場合の影響が大きすぎる」などとして、検査受診は各旅館の判断とし、陽性確認時の公表の仕方や補償、休業する場合の期間などを定めたマニュアルを求める声が上がった。入湯税については「客に納得してもらえない」「客数減少で経営圧迫をもたらす」などの反対理由が挙がった。

 田中三郎(たなかさぶろう)理事長は「検査料の負担もあるし、温泉街全体で風評被害に遭う恐れがある」と強調。入湯税も「宿泊費は施設で1泊数万円から5、6千円までばらつきがある。引き上げるにしても段階的にするべきだ」と話す。

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 温泉地によっても意見は分かれ、板室温泉は「全員が賛成」の立場だ。10施設が加盟する同温泉旅館組合の室井孝幸(むろいたかゆき)組合長は「取り組みをPRして他の観光地と差別化を図る。客離れは怖いが、板室が選ばれるために必要」と話す。

 根底には「コロナ禍が続く中、いずれは感染する前提で物事を考えたい」という思いがある。感染した場合に「早めに対処ができる」とし、経営する宿では自費でパート従業員にも検査を受けさせるという。

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 新たな試みを前に揺れる観光関係者の思いに市はどう答えるのか。

 26日の市新型コロナ対策会議。市幹部を前に渡辺市長は「観光モデルの大枠は6、7月時点のもの。試行期間のうちに柔軟に方向を変えたい」などと述べた。

 取材に対し、渡辺市長は「月1回の検査で安全の完全な担保にはならないが、観光客や市民が観光業に漠然と抱く不安を和らげたい」と強調。「ウィズコロナはまだ続く。観光客に負担を求めるこのモデルは、感染リスクとされる観光客のイメージも変える。他の自治体がしていない感染対策をすることで市のブランド向上になる」と話す。

 一方で「風評の懸念は当然。さらに対策を考えたい」として、検査の負担軽減や陽性判明時の「早期発見協力金」制度創設も視野に理解を得たい考え。丁寧な説明が求められる。