8強入りを決めた試合後、小針監督のねぎらいの言葉を胸に球場を後にする作新学院ナイン=3日午後、清原球場

 3日の栃木県高校野球交流試合最終日。作新学院が一人の走者も許さない完全試合で黒羽に11-0の五回コールド勝ちを収め、集大成の試合を締めくくった。昨夏に県大会9連覇を達成したが、10連覇を狙った今夏は甲子園大会が中止に。選手たちは過酷な現実を受け止めながら懸命に前を向き、王者としての戦いを貫いた。

 五回表2死、走者なし。「あと1人」の場面で内野陣がマウンドに集まった。「全員で、全力で行こう」。4番手の芳賀徳裕(はがのりひろ)が目いっぱい腕を振って投じた5球目の直球を相手打者が空振りし、勝負が決した。「一秒一秒をかみしめた」と鈴木蓮(すずきれん)主将。万感の思いを胸に整列した選手たちの目に涙が光った。

 5月末に甲子園中止が決まって以降、小針崇宏(こばりたかひろ)監督は「今だからこそ野球と向き合おう。一生懸命やることの大切さを学ぼう」と失意に暮れる選手たちと向かい合ってきた。

 練習では歴代の先輩が甲子園から持ち帰った土がまかれたグラウンドを甲子園に見立てた。「『俺たちの聖地で全てを出し切る』。その思いで今まで以上に練習した」と主戦右腕の田中公稀(たなかこうき)。グラウンドには常に厳しいノックに食らい付くナインの姿があった。

 交流試合では目指してきた「全員野球」を体現した。主に継投策で全3試合を無失点。黒羽戦のシートノックは、指揮官の代わりに粒良優太(つぶらゆうた)らマネジャーがノッカーを務めた。ベンチが一番の盛り上がりを見せたのは四回の攻撃。けがで控えに回った星野真紘(ほしのまひろ)が1死一、二塁の場面で代打で登場し、適時打を放った瞬間だった。3年生全31人がそれぞれの役割を全うし、“無敗の夏”を来年につないだ。

 「一つになって作新の野球をしてくれた。感謝したい」と語った小針監督は、試合直後の選手たちに、あえてこの言葉を送った。

 「優勝おめでとう」。心からの、ねぎらいだった。