天然由来成分の除菌液を噴出する噴霧器を備えたうつのみや観光のバス=22日、宇都宮市

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」開始から1週間が経過したが、依然として県内バス業界は苦境にあえぐ。例年ならば夏休み期間で貸し切りバス需要が多い時期にもかかわらず、事業者からは「予約はほぼゼロに等しい」との声も聞こえる。車内の除菌や換気、乗客の検温などの感染防止策を徹底し、需要回復の時に備える。

 「団体客が動き始めなければ、われわれの厳しい状況は変わらない」

 貸し切りバス事業の「うつのみや観光」(宇都宮市)の渡辺昌宏(わたなべまさひろ)運行管理本部兼営業推進本部部長(56)は険しい表情を浮かべる。

 4月以降の売り上げは前年比で9割減。8月の予約もほぼゼロだ。「Go To」で旅行業者から発注があれば好転の可能性もあるが、「団体旅行が盛り上がるのはまだ先」と見通す。

 6月に「安全性の高い除菌」を方針に掲げ、バス全15台に天然由来成分の除菌液を放出する噴霧器を配備した。シートには大阪大が新型コロナウイルス消毒を実証したという除菌剤を定期的に吹き付ける。渡辺部長は「お客さまが安心できるよう対策を着実に進めるしかない」と力を込める。

 貸し切りバス45台を保有するTCB観光(栃木市)もコロナ禍前は予約で埋まっていたが、相次ぐキャンセルで4月以降は「全くと言っていいほど稼働していない」(担当者)。

 乗客の安心につなげるため策定したガイドラインに沿って車内の空間除菌やエアコンの外気導入モードによる空気の入れ替え、乗客の検温などを行う。担当者は「『Go To』は個人客向けであまり期待できないが、お客さまがいつ戻っても良いよう態勢を整えたい」と話す。

 観光地を走るバスも感染防止策を徹底する。7月から運行を開始した奥日光の湿原周辺を走る低公害バスは、乗客へ検温や手指の消毒、マスク着用への協力を求めている。また、運行中は換気のため車内の窓を開ける。

 例年なら夏休み中で平日でも混雑するが、今年は空席が多くを占める。県日光自然博物館の担当者は「観光地としては苦しい」と頭を抱える。利用者の9割以上が県外からといい、「『Go To』で少しでも回復してほしい」と願う。

 県バス協会の小矢島応行(こやじままさゆき)専務理事は「バスは密室のイメージを持たれがちだが、業界全体で感染防止策は徹底している。今すぐは無理でも失った時間を取り戻せるようになってほしい」と期待を寄せている。