林の中に積まれた指定廃棄物の牧草。保管が長く続き、問題解決への農家の期待感は冷めつつある=22日午後、那須塩原市内

 「期待はしていない」。県内の指定廃棄物を巡り、一部自治体で指定解除への動きが出始めた一方、保管量が圧倒的に多い那須塩原市や那須町の農家は、行政の議論に冷ややかな目を向けた。保管が日常化し、切迫した負担も減った状況で、農家自身の熱量も低下しつつある。塩谷町が処分場(長期管理施設)の詳細調査候補地に選定され、30日で6年。東日本大震災からは10年が迫る中、硬直化した問題は「風化」の様相を呈し始めた。

 那須塩原市で酪農を営む70代男性は、牛舎から500メートル離れた林の中で5・6トンを保管してきた。「みんなもう放射能を気にしていないでしょう。風評被害も感じないし、保管自体の負担も今はない」。22日、指定廃棄物の牧草を覆うシートに冷めた視線を向けた。

 6月の市町長会議では矢板市が、国の基準値を下回った農業系指定廃棄物について指定解除を協議する姿勢を示した。矢板市の6農家が約16トン保管するのに対し、那須塩原市と那須町は計106農家、約2900トン。規模の差は大きい。

 男性には、昨年の再測定の結果、基準値を下回ったと通知が来た。「一般の廃棄物と同様に処理するのが合理的」と考えている。ただ量を減らして集約するにしても、市の施設だけで収まるのか、別の場所が選ばれるのか-。塩谷町での反対運動が頭に浮かぶ。

 「責任を持って移しますから」。国の関係者らから何度も聞いた言葉だが、解決の現実味が持てない。

 「ずっと保管するのかも、と諦めもある。他の農家はどう思っているのかな」。互いに「タブー視」してきた問題。保管農家同士の横のつながりはなく、地域全体にとって今、何がいい方法なのか分からない。

 「農家も行政も動きが鈍くなった」。那須町、畜産農家の50代男性も問題の「風化」を感じている。外食控えや輸出の減少など、新型コロナウイルスが肉牛の業界に与える影響の方が、はるかに目下の心配事だ。

 当初、稲わらから高濃度の放射性物質が検出された。量も多い方だ。だが、被害者なのに加害者のように扱われたころと比べれば、今は風評も感じず、仕事も地域も格段に落ち着いた。

 濃度が高い指定廃棄物の暫定集約が、すぐに進むイメージは持てない。「早く処分してほしい気持ちは今も変わらないが、周囲から見えない場所にあるし、このまま『なあなあ』で続くのかも。年月がたってしまった」とつぶやいた。