大勢の愛好者が歌声を披露した第73回県芸術祭ホール部門の音楽祭=2019年11月、栃木市

 今秋開催予定だった第74回栃木県芸術祭(県文化協会、県主催)のホール、茶華道部門(計10分野)が新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止されることが29日、下野新聞社の取材で分かった。1947年の第1回開催以来、中止は初めて。長年ホール部門の運営に携わってきた同協会参与の安久都和夫(あくつかずお)さん(85)は「県芸術祭は愛好者がこぞって参加する特別な場所。(中止は)やむを得ないが、文化のともしびを消さないようにしていきたい」と無念さをにじませた。

 東京、大阪に次ぎ全国で3番目に古い歴史のある県芸術祭は美術、文芸部門も含め、毎年約2万人が出演・来場する県内最大規模の文化の祭典だ。芸術愛好者のすそ野を広げる機会を提供する目的で毎年7~11月に催され、本県の多彩な芸術文化を育ててきた。

 中止されるのは吟詠剣詩舞、邦楽、音楽、演劇、日本舞踊、民謡・民舞、バレエ、謡曲と茶、華道の各分野。バレエ以外は高齢者が多い上、新型コロナの影響で練習時間の確保がままならず、発表に際して「3密」回避が難しい状況が想定されることから各部会などで決定した。美術、文芸部門は開催される。

 音楽と共に第1回から連続参加してきた演劇分野で運営委員を務める山縣恒雄(やまがたつねお)さん(76)は「大きな声で顔を突き合わせる演劇は稽古自体が難しい。苦渋の決断だった」と話す。

 謡曲とバレエは舞台上で出演者同士の距離を保つなど感染防止策をとった上で開催しようと模索したが、再び感染者数が増加している状況を踏まえて断念した。バレエの運営委員柳宏子(やなぎひろこ)さん(65)は「舞台発表は子どもたちの夢なのでやってあげたかったが…」と声を落とした。

 県文化協会事務局は「何とか開催したかったが、参加者の安全安心を考えやむなく中止を決めた」としている。