ことり助産院の診察室。落ち着いた空間で授乳の相談などに応じている

小嶋由美さん

ことり助産院の診察室。落ち着いた空間で授乳の相談などに応じている 小嶋由美さん

 出身地などに帰省し子どもを産む「里帰り出産」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年は断念する人も多いのではないだろうか。産後は心身共にさまざまな変化が生じるため過ごし方には注意が必要。ただ、里帰りせずに退院後も自宅で過ごすとなると、家事や育児など女性の負担が大きくなりやすい。そこで、栃木県鹿沼市上南摩町にあることり助産院の小嶋由美(こじまゆみ)助産師(48)に、産褥(さんじょく)期の過ごし方の注意点や周囲ができるサポートなどについて聞いた。

 産褥期とは出産後に体が妊娠前の状態へ戻るまでの期間を指す。期間の長さは人によって変わるが、一般的に6~8週間という。この時期はホルモンの影響で心が不安定になっている上、慣れない育児に緊張が続いている女性も多い。産後うつの発症に十分気を付けよう。

 こうした産褥期に無理をし過ぎると、高熱が続く産褥熱や膀胱(ぼうこう)炎を引き起こすことがある。産後は子宮口が緩んでいるために、立っている時間が長くなると子宮の戻りが悪くなってしまう。料理や洗濯などの立ち仕事はできるだけ避けよう。

 心身共に大きなダメージを受けている産後は、周囲のサポートが重要になる。小嶋さんは「パパや周りの人は1日2、3時間、お母さんを1人で休ませてほしい」と強調する。乳児を別室で世話をするなど、母親を完全に1人にして、心の緊張をほぐすことが大切だ。

 産後の女性に対するパートナーの在り方は、夫婦の関係にも影響を与える。産後の女性は心が繊細になっているため、その時のパートナーの態度や対応が悪いと、産後に夫婦関係が悪化する「産後クライシス」を引き起こす可能性もある。パートナーは仕事時間を調整するなどして、産後の女性の心身が順調に回復できるように支えよう。

 産後、心や体に疲れが出てきてしまったら、積極的に自治体の関係窓口や産院、助産院に相談し、助けを求めるのがお勧め。県内では多くの市町が通院、宿泊などの「産後ケア」に対する補助制度を整備している。ことり助産院でも、産後の母乳指導や骨盤ケアなどを行っている。

 小嶋さんは「里帰りできずに不安を抱えたまま出産する妊婦さんはいると思う。赤ちゃんと向き合うことが嫌にならないように周囲はしっかりサポートしていかなければならない」と話している。