夏が来るたびに思い出す光景がある。

 1992年7月21日。第74回全国高校野球選手権栃木大会の4回戦で佐野日大が足工に3-2でサヨナラ勝ちした。

 当時宇都宮の選手で次戦に備えてベンチ裏で待機していた筆者が目にしたのは、佐野日大の本格派左腕・谷村逸郎(たにむらいつろう)がマウンドから戻るたびにバケツに嘔吐(おうと)する姿。勝利に懸ける執念の違いをまざまざと感じた。

 ことしは夏の選手権の100回大会が行われる節目の年。本紙で連載する記念企画の中で、札幌市在住の谷村さんに取材する機会を持てた。

 日大から三菱自動車川崎に進み、2003年の都市対抗大会でMVPを獲得した谷村さん。準優勝に終わった高校最後の夏の思い出を尋ねると、「今になって思えば、『甲子園組』への対抗心が長く野球をやる原動力になった」と振り返った。

 筆者にとっての谷村さんのように、県内高校野球ファン一人一人の心に刻まれた名選手がいる。ことしの栃木大会の開幕は7月6日。100回を飾る優勝争いを楽しみつつ、歴史を彩ってきたヒーローたちに思いをはせる夏にしたい。