■先見据え木製バット 作新・横山陽樹 捕手
野球人生の先を見据えて大きな決断を下した。
作新学院の横山陽樹(よこやまはるき)は5月下旬の全体練習再開以来、金属バットではなく木製バットで練習。「ずっと練習してきた成果を最後の試合で出す」。交流戦も木製バットで挑む覚悟だ。
1年時の2018年夏。甲子園1回戦の大阪桐蔭戦で2安打を放ち、鮮烈な公式戦デビューを飾った。甲子園8強に進出した昨夏は3試合で打率5割7分1厘と大活躍。しかし、本人は「打ち損じばかり。力不足」と結果とは真逆の感想を抱いていた。
レベルアップのヒントは昨秋の高校日本代表で得た。全国の猛者と時間を共有する中で東邦高(愛知)の石川昂弥(いしかわたかや)(現中日)の美しいスイングが目に焼き付いた。チームに戻ってからは、その軌道をイメージしながら練習。木製バットを振り込むようになったのもこの頃からだった。
積み上げた高校通算本塁打は25本。捕手としても二塁送球1・79秒を計測するなど、世代有数の選手に成長を遂げた。「もっと経験は必要だが、ゆくゆくはプロ入りしたい」。先のステージに向けた区切りとなる集大成の夏。聖地では、なし得なかったアーチを描く準備はできている。
■雌伏の大器、初登板へ 国学栃木・シャピロ・マシュー・一郎 投手
大器がついにベールを脱ぐ。
身長190センチ、体重94キロと恵まれた体格を持ち、右腕から最速145キロの直球を投げる国学院栃木のシャピロ・マシュー・一郎は「一日でも長く仲間と野球をしたいし、プロのスカウトにもアピールしたい」と気合をみなぎらせる。
東京都出身で父は米国人、母は日本人。中学の時点で140キロ台の直球を投げ込み、3年時には40校以上の高校から誘われたが、ここまで日の目を見ることはなかった。原因は高校入学後、急激に身長が伸びたことによる成長痛だった。
治ってはぶり返す左膝の痛み。マウンドに上がれず基礎トレーニングを繰り返す日々の中、昨冬には野球を辞めようとしたが、三浦純(みうらじゅん)コーチから「プロ入りの夢を諦めるのか」と叱咤(しった)され目が覚めた。
現在は体の状態が上向き、交流試合で登板機会を得るために競争を続ける。自信を持つのは豪快なフォームから投じる伸びのある直球と、高い制球力。「球速にこだわらず、チームのために投げる」と初の公式戦登板を心待ちにする。
座右の銘は「苦しみなくして栄光なし」。雌伏の時を経て迎えた最後の大会で、その名を刻んでみせる。