栃木県内では今年、乳幼児を虐待して死亡させたとして、親が逮捕される事件が相次いだ。県警によると、過去10年間で0歳児を含む8人の子どもが虐待の疑いで死亡している。全国の乳幼児虐待死の加害者は、母親が約半数を占めるという。母親による乳幼児虐待の背景について、専門家は「出産直後は精神的に不安定になりやすい」と指摘する。医療機関や自治体は虐待の危険性がある親の支援に取り組んでいるが、支援を拒まれるケースもあり現場の悩みは深いという。

 佐野市の賃貸住宅で2018年、生後2カ月の長男が虐待を受けて死亡したとされる事件。県警は今年5月、殺人容疑で母親の無職女(41)=殺人罪で起訴=を逮捕した。捜査関係者によると、母親は県警の調べに対し、「妊娠を知った時、子育てに不安しかなかった。子どもを愛せるか、不安でいっぱいだった」と供述したという。

 妊産婦の支援に取り組むさくら産院(さくら市)院長の泉章夫(いずみあきお)医師は、母親による乳幼児虐待の一因について「女性は出産後、女性ホルモンが急激に下がり、精神的に不安定になりやすい」と指摘する。実際、生後2、3カ月の乳児への虐待リスクが高いという。

 特に注意が必要なのは、児童福祉法で定められた「特定妊婦」。「望まない妊娠」や「若年での妊娠」などが該当する。国は虐待の発生や深刻化を防ぐため、自治体や医療機関で連携して早期に支援するよう求めている。

 特定妊婦への支援は、出産前の通院時に医療機関が気付いた場合などにスタートする。市町の保健師による訪問指導などの支援が受けられるが、他人との関わり合いを避ける母親は支援を拒否する場合も。こまめに連絡を取ることが逆効果になるケースもあり、間合いの取り方は難しい。

 県内では多くの市町が、産後の訪問支援や入院などで母親の負担を軽減する「産後ケア」に対する補助制度を整備している。泉医師は「社会から孤立している場合、ケア事業の情報を知らないことも多い」とし、制度の周知徹底の必要性を訴えた。