県民プランに加え、日光市民プランを初めて用意した「日光金谷ホテル」の一室=18日、日光市

 新型コロナウイルスの感染拡大で観光業が大打撃を受ける中、栃木県内の宿泊施設で、新たに県民や市民向けの宿泊プランを扱う動きが出ている。県外からの観光需要が見通せないため、県民向けの格安料金プランなどを設定し、県内需要の掘り起こしを狙う。「地元の良さを改めて知ってほしい」。宿泊業者はそんな“再発見”の願いも込める。

 世界遺産「日光の社寺」にほど近い日光市上鉢石町(かみはついしまち)の旅館「季(とき)の遊(ゆう)」は5月下旬から、初めて県民限定のプランを始めた。一般的な1泊プランは朝食付きで1人6500円程度。県民プランでは素泊まり1人1泊4千円からの割安料金とした。

 同市を訪れる観光客と季の遊の利用者の大半は県外客。荒木正聡(あらきまさとし)支配人は「新型コロナがなければやろうと思わなかった」。落ち込んだ客足は戻っておらず、少しでも稼働率を上げようと「採算度外視でやっている」と話す。

 同所の「日光金谷ホテル」は県民プランに加え、日光市民プランを初めて用意した。曜日などで料金が異なるが、割安の県民プランよりさらに料金が1千円安い。都道府県境をまたぐ移動自粛は解除されたが、地神嘉之(じがみよしゆき)支配人は「遠方の旅行はまだ敬遠される雰囲気がある。利用機会が少ない地元の人にお越しいただき、知ってもらう良い機会にしたい」と期待する。

 那須町湯本の休暇村那須は6月の1カ月間、県民だけの特別料金で宿泊できる1日3組の限定プランを設けた。1泊2食付で通常、税別1万1500円の大人料金が、2520円引きの同8980円となる。「県民限定」を大きく打ち出すのは初だったが、好評で予約は全て埋まった。

 売り上げ増よりも、地元の再発見の機会とする狙いもある。那珂川町馬頭の国登録有形文化財「飯塚家住宅」を改修した宿泊施設「飯塚邸」は6月5日から、本県民に加え、隣接する茨城県民限定の特別プランの販売を始めた。例えば、1人一泊税別2万8千円の「邸の部屋」は3人以上の宿泊で、一人同1万5千円の格安となる。

 宿泊客は東京圏や外国人観光客が多く、県民は1割弱という。運営する大田原ツーリズムの藤井大介(ふじいだいすけ)社長は「県民の方に地域の良さや、こんな建物があるということを知ってもらう機会にしたい」と力を込めた。