栃木サッカー部の選手たちが、目標としてスコアボードに手書きで記した「県大会優勝」の文字=栃木高

 新型コロナウイルスの感染拡大により、今夏に予定されていた全国高校総合体育大会(インターハイ)の史上初の開催中止が決まった。栃木県内でも3競技が開かれる予定だった高校生スポーツの最大の祭典。県高校総体に続いて県予選の中止も決まり、今年は試合に出られぬまま引退を余儀なくされる3年生も少なくない。「最後の夏」を戦えなかった選手らの思いを紹介する。

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 「引退だけど、引退じゃない。練習試合でもいいから、1回は全員でプレーしような」。インターハイ中止決定から一夜明けた27日、栃木サッカー部の大貫祐市(おおぬきゆういち)監督は、電話口で上原真路(うえはらましろ)主将に語り掛けた。

 同校は県新人戦で準優勝。全国選手権大会4強の矢板中央を破り、佐野日大との決勝はPK戦にまで持ち込んだ。全ての県大会を通じて初の優勝は手の届くところにあった。「さあ、これから」。全員が心を一つにしていた矢先に、輝くべき舞台がなくなった。上原主将は冷静に受け止めつつも「事の大きさがまだ理解できないでいる」と戸惑いを打ち明ける。

 県内有数の進学校で、3年生は夏で引退するのが通例だ。だが今年は違う。指揮官は3年生の思いに寄り添い「気持ちに整理がつかなければ、(冬に全国大会がある)選手権まで続けてもいい」と選択肢を広げた。中には浪人覚悟で続ける意向の部員もいるという。

 県新人戦で22年ぶりに優勝を飾った栃木女ハンドボール部にとっても、インターハイ出場は夢ではなく、明確な目標だった。26日夕に大会中止を知った浅山琴羽(あさやまことは)主将。「これで終わりたくない…」。電話の向こうで仲間たちは泣いていた。思いは一緒だった。

 3年生はマネジャー含め9人。練習時間が限られる中で、質と自主性を重視して実力を磨いてきた。「ハンドボールは高校まで」と考えていた浅山主将。昨年の県予選決勝で敗れた先輩の思いも背負い、臨むつもりだっただけに「戦って負けるよりずっと悔しい」。無念さがにじむ。小西正寿(こにしまさとし)監督は「生徒と面と向かって話したいが、今はその機会すら持てない。今後、成果を見せる場をつくってほしい」と思いやった。

 県予選を集大成の舞台として、練習に打ち込んできたチームも多い。大田原バスケットボール部の杉森豪(すぎもりごう)監督は「一番花のある大会を戦わせたかった。まだ先のことは考えられない」と気持ちの整理がつかずにいる。

 県新人戦では、惜しくも1点差で準々決勝敗退を喫した。橋本滉生(はしもとこうせい)主将は「あの試合でみんなの意識が変わった。『県大会4強入り』の手応えもあっただけにやりきれない」と声を詰まらせた。

 栃木サッカー部の器具庫には、目標に掲げる「県大会優勝」の文字が並んでいた。「これまでやってきたことは今後に生きると信じ、これから取り組んでいく」。上原主将は自らに言い聞かせるように話した。