「多様なシナリオに対応する柔軟性を持つべきだ」と訴える稲野氏=19日午後、宇都宮市今泉4丁目

 新型コロナウイルス感染者の県内初確認から、22日で4カ月。医師で県新型インフルエンザ等対策有識者会議議長の稲野秀孝(いなのひでたか)氏(65)=呼吸器内科=に、今後の課題などを聞いた。社会経済活動の本格化に応じた検査体制について「判断が難しい。行政と医師会でしっかり話し合う」と述べた。医療機関の経営悪化も憂慮し、医療従事者らへの支援を訴えた。

 -検査・医療提供体制の整備など県の取り組みをどう評価するか。

 「関東では感染者数も一番少なく、うまくいっている。検査・医療提供体制は、医療面では十分だろう。疫学調査や社会活動を広げるために、症状が軽い人まで診るには足りないが、まず重症者を治すという観点では今の体制でもやっていけるのではないか」

 -検査数が少ないという県民の不安もあったが。

 「指定感染症になったことで、検査で陽性だと入院が必要になった。どんどん患者が出たら医療体制が逼迫(ひっぱく)することが明らかになり、PCR検査は数を絞る傾向が出てきた。患者数を増やすと病院が逼迫するというジレンマがあったのは事実だ」

 -検査の必要性は医師が判断する。「検査を受けたいのに受けられない」という声もある。

 「専門医でも、感染の疑いの有無ははっきり色分けできず、迷いながらやっている。受けたい人全員を検査するのは、医療ではなく疫学。心配だから検査したいという場合は断るしかないが、そういう人にも話をして、納得させて帰すことが医師の役割でもある」

 -現在の課題を。

 「第2波、第3波への準備や、検査・医療提供体制の再検証が必要だ。医療機関の経営難による医療崩壊、医療危機には早めに対策を立てないと、社会的な不安が募る。行政にしっかりと目配りをしてほしい」

 -今後の検査・医療提供体制をどう考えるか。

 「医療としての検査と疫学としての検査をどう区別し、PCR検査と抗原検査、抗体検査をどううまく組み合わせるか。検査や治療を積極的にやるか、慎重にやるかなど、できる限り都道府県で考え、動くことも必要だ。多様なシナリオに対応する柔軟性を、栃木県が持たなければいけない」

 -医療の在り方は。

 「地域医療構想では、有事の新興感染症には誰も触れなかった。『5疾病6事業』と言うが、新興感染症を事業の一つに入れるべきだとか、リスク分散という項目を入れるべきだとか言う人もいる。そういったことを考えると、まず圧倒的に医師の数が足りない。余裕が必要だ」

 ◆プロフィル 宇都宮市出身。広島大医学部卒。宇都宮市今泉4丁目の稲野医院院長。県医師会会長。