フロントでの「密」を避け、宿帳も客室内で記入する。手袋をしたスタッフが部屋に残る物で触れるのはポットと湯飲み茶碗だけという=15日午後、那須町湯本、山水閣

 新型コロナウイルスの感染防止に伴う県境をまたぐ移動の自粛が19日、東京など5都道県を含めて全面解除される。首都圏からの観光客が多い日光や那須の温泉宿泊施設では、感染防止を重視した受け入れ準備が進む。前例がないため「万全の態勢」を作るには手間や費用をかけるほかないのが現状だが、試行錯誤の中、「安全安心」を前面に打ち出して誘客を図る動きも出ている。

 15日午前、日光市鬼怒川温泉大原の鬼怒川パークホテルズ。宿泊後の客室で、従業員が消毒液を念入りに噴霧して回った。エレベーターのボタンなど、人の手が触れる部分は専用器具で紫外線を15秒程度当てることで「ぬらさずに除菌できる」と大木修一(おおきしゅういち)支配人(62)は説明する。

 同館は今月、約1カ月半ぶりに営業を再開。7月中旬までは金、土、日曜のみ営業する。全129室の稼働率を50~60%に抑え、食事処の席数や部屋食を運ぶ回数を減らして「3密」を避ける。浴場は1時間おきに除菌し、玄関には靴底用の消毒液も置いた。コロナ仕様の接客用マニュアルも作り、対策は50項目を超える。

 「従業員の安全を守り、お客さまに媒介させてはならない」と小野真(おのまこと)社長(48)。器具などの配備に既に約100万円を投じるなど「労力もコストもかかるが、今は最大限の対策を取る。全てのお客さまをウエルカムで迎えたい」と話した。

 5月21日に営業を再開し、6月1日から県外客を受け入れている那須町湯本の「山水閣」。清掃徹底のため客室の使用は中1日を空け、全24室中、稼働を半数の12室にとどめている。

 スタッフの着衣はチェックイン、アウト時に分け朝、夕で着替えるほか、客同士の3密を避けるために宿帳への記入は各客室で行う。新たに120個の枕を仕入れ、カバーだけでなく毎日丸ごと洗っている。

 片岡孝夫(かたおかたかお)社長(47)は「日常から解放されようと訪れる客が自ら行う対策を最小限にし、負担感を取り除きたい」と気を配る。

 対策費は150万円を超えるが、片岡社長は「ピンチをチャンスに変える発想。『安心』という付加価値で信頼を獲得したい」と強調する。

 こうした対策を学ぼうと、他県からの視察もあるという。15日には福島県の旅館組合青年部が視察に訪れた。星永重(ほしながしげ)副部長(38)は「新しい生活様式の中、サービスを落とさず価値を維持しているところは参考になる」として、同組合内で対応策を共有していく考えという。