足利学校や渡良瀬川から見た夕日、まちなかの狭い通りなど、カレンダー「直人のスケッチ」を飾る水彩画は、足利市民なら誰もが目に浮かぶ風景が続く。丹念に描き込まれた絵は爽やかで、すがすがしい気分になる▼ただ、代表的な風物詩である足利花火は登場しない。作者である同市の川島直人(かわしまなおと)さん(27)は発達障害で、小さい頃から「大きな音におびえ、見たことがない」(母親の知子(ともこ)さん)からだ▼人とのコミュニケーションが苦手な直人さんが絵と出会ったのは中学2年の時。絵の具の使い方を学び、時間を持て余していた生活が一変した▼特別支援学校の紹介で就職した市内の印刷会社で作業補助の仕事をきちょうめんにこなし、帰宅後毎日決まった時間に、いつも同じスケッチブックに向かう。知子さんらと自宅周辺を散歩しては、題材の写真を撮る▼極細ペンで輪郭を描き、色に強いこだわりを持って少しずつ塗るので、1年間で完成するのは4、5枚という。そんな絵に魅了され、勤務先の先代社長川本孝一(かわもとこういち)さん(70)が毎年の個展やカレンダー製作など支援を始めて10年がたった▼「コロナ禍で日常が激変した今だからこそ、心が癒やされる直人の絵を多くの人に見てほしい」と川本さん。周囲に支えられ、本人は以前と変わらず、黙々と大好きな絵を描き続けている。