陽西保育園のおやつの風景。保育士は園児に声を掛けながら食べ方を教えている=11日午後、宇都宮市陽西町

 新型コロナウイルスの感染拡大を予防するため政府が示した「新しい生活様式」だが、子どもとの触れ合いが欠かせない保育現場はその対応に苦慮している。子どもを抱っこしたり一緒に遊んだりする場面が多く、こども園や保育園からは「実践は難しい」との声が上がる。保育士らは保育と感染症対策の両立に悩みながら、手探りで対応に当たっている。

 政府が示した新しい生活様式は46項目に及ぶが、保育現場では当てはめにくいものが多い。例えば、人との間隔をできるだけ2メートル、最低1メートルは空ける「身体的距離の確保」について、栃木市岩舟町静和にある認定こども園しずわでら幼稚園の武藤雪絵(むとうゆきえ)園長(51)は「保育現場で実践するのは不可能に近い」と指摘する。

 「幼い子どもにくっつかないでと言ってもそれは無理な話。年齢が低くなればなるほど抱っこする場面も増える」と武藤園長。そもそも保育は「スキンシップこそが大事。子どもたちは先生や友達との触れ合いの中でコミュニケーションの仕方を学んでいく」と強調する。

 食事も「料理に集中、おしゃべりは控えめに」とあるが、宇都宮市陽西町にある陽西保育園の福田清美(ふくだきよみ)園長(66)は「食事中、子どもに声を掛けながら食べ物に対する興味を引き出したり、食事の仕方を教えたりするのも保育士の役目」と説明。「静かに食べさせるのは難しいし、できたとしてもそれでは食事の楽しみを奪ってしまうことになるのではないか」と懸念する。

 現場の保育士からは、マスクを着用したままの状態で子どもたちと接する難しさを指摘する声も上がる。

 宇都宮市内の保育園で働く30代女性は「言葉によるコミュニケーションができない乳児の場合、相手の表情から状況を読み取っていることが多い」。マスクを着けていると目しか見えないため「子どもとコミュニケーションがとりにくい時もあり、どうしたらよいのか」と不安げだ。

 厚生労働省は保育所などにおける新型コロナウイルスへの対応についてホームページで公開しているが、手洗いや消毒など一般的な内容が多く、食事や散歩の仕方など園内生活の具体的事例まではほとんど踏み込んでいない。

 県子ども政策課の担当者も「規模や園児数などは園ごとに異なるため、細かい部分は各園の先生に工夫してもらっているのが現状」と答えるにとどまった。各園に対し保護者の意見や要望が増える中、現場では「正解」が見えない状況が続いている。