新型コロナウイルスの感染対策として、身の回りの物を消毒する機会が以前よりも増えた。ただ、需要の高まりからアルコール消毒液はいまだに入手しにくくなっている。こうした中、厚生労働省は身の回りの物の消毒に関し市販の塩素系漂白剤を使った消毒方法をホームページ(HP)で公開しているが、強いアルカリ性のため気を付ける点も多い。希釈して使用する際の注意点などを、栃木県薬剤師会の渡辺和裕(わたなべかずひろ)会長(50)に聞いた。
厚労省のHPによると、市販の塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)は濃度を0.05%まで薄めてから、ドアノブなど身の回りの物を拭いて消毒する。商品の種類や購入してからの期間、保存条件などによって濃度が異なるため、希釈の仕方は商品のパッケージやHPを参考にしよう。
最近、製品評価技術基盤機構(NITE)が消毒方法検証の中間報告を行ったことなどで話題の「次亜塩素酸水」は塩素系漂白剤を希釈した物とは全く違うので、混同しないよう注意したい。
塩素系漂白剤の次亜塩素酸は衣類などを脱色させるほか、金属を腐食させてしまう可能性もある。このため渡辺会長は「希釈した液を使って身の回りの物を拭いた後は場合によって、清潔な布を使って再度、水拭きすることが必要」と説明する。
希釈後もアルカリ性の成分が強いため、アルミ製容器などに詰め替えて使用するのは禁止。酸性の薬品と混ぜてしまうと、人体に危険な塩素ガスが発生する可能性があり大変危険だ。希釈する際は手袋を着けて作業し、万が一、皮膚に付いたら水でよく洗い流そう。
また保管環境にも注意する必要がある。塩素系漂白剤の塩素は時間とともに減少してしまう上、日光の当たる場所や高温になる場所で保管すると濃度の低下が早まるためだ。希釈したらなるべく早く使い切った方がいい。
渡辺会長は「より安全に正しく感染予防に努めてほしい」と呼び掛けている。
このほか県薬剤師会は現在、小中高校、幼稚園や特別支援学校などに対し、消毒用アルコールの代替品として「微酸性次亜塩素酸ナトリウム消毒液」を無償で提供している。
子どもたちが集う場所ではおもちゃや机など、消毒液を使用する機会も多い。渡辺会長は「子どもたちが安全に過ごせるようにぜひ役立ててもらいたい」と話している。