牛乳瓶を手にする山川社長(左)と星野リゾートリゾナーレ那須の広報担当者=5月下旬、那須町

 那須町高久乙のホテル「星野リゾート リゾナーレ那須」で、食品ロスを防ぐ取り組みが始まった。新型コロナウイルスの感染拡大によって販路を失った地元産の牛乳を「ミルクジャム」として製品化し、夏には星野リゾート内のレストランなどで提供する。酪農と観光という、コロナ禍で打撃を受ける二つの業種が手を取り合い、「アフターコロナ」に向けた歩みを進める。

 使用するのは、森林ノ牧場(那須町豊原乙、山川将弘(やまかわまさひろ)社長)のジャージー牛乳。生産、加工、販売までを手掛ける同社では、外出自粛などの影響で牧場に併設するカフェへの客足が減った上に、観光施設や飲食店へ卸す量も落ち込んだ。4月の売り上げは例年の半分以下という。

 牛の健康に影響するため、毎日の搾乳は止められない。山川社長は「何とかフードロスを防ぎたい」と、牛約20頭からの搾乳量を8割ほどに抑え、それでも行き場がない生乳は加工品に回すなど対応に追われる。

 ミルクジャムの開発は、生産現場の苦境を知ったホテル側が提案した。星野リゾート全体の取り組みにつなげようと、日本旅館・星のや東京(東京都千代田区)の浜田統之(はまだのりゆき)料理長が中心となり、素材の濃厚な味と香りを生かして製品化した。どのような食材と組み合わせるかを検討し、7月ごろには県内外の施設で提供を始める予定。

 リゾナーレ那須の担当者は今後、公共交通機関を使わずに車で行ける範囲内での旅行需要が増えると見込み、「地元の食材を新たな形で提供し、地域の人に地元の魅力を再発見してもらいたい」と話している。

 山川社長は「新たな可能性を示してくれた」と感謝し、「感染拡大前の状況に戻るとは考えにくい。取引先の一極集中による経営リスクを減らすためにも、販路の分散を進めたい」と前を向く。