改訂版「黄ぶな物語」の表紙

「黄ぶな物語」に取り組むやまなかさん=4月末、都内のアトリエ

故立松和平さん

「黄ぶな物語」初版の一場面

「黄ぶな物語」改訂版の一場面

改訂版「黄ぶな物語」の表紙
「黄ぶな物語」に取り組むやまなかさん=4月末、都内のアトリエ 故立松和平さん 「黄ぶな物語」初版の一場面 「黄ぶな物語」改訂版の一場面

 宇都宮市出身の作家立松和平(たてまつわへい)さんが62歳で亡くなって今年で10年。作品の一つに疫病退散を祈る同市の郷土玩具「黄ぶな」を題材にした絵本「黄ぶな物語」がある。新型コロナウイルスの感染拡大で黄ぶなが話題になる中、20年ぶりに新装改訂された。絵は初版に続き、立松さんの長女で画家のやまなかももこさん(42)=東京都在住=が新たに描き下ろした。「(コロナ禍という)現実を背負いながら描いた」という迫力ある構図や色調はインパクト十分。物語のメッセージ性が強まった。

 「黄ぶな物語」は、黄ぶな伝説から着想を得て書いた、自然破壊を続ける人間に警鐘を鳴らす物語。

 森に多くの人が入り木を伐採し家を建て、田畑を開墾していったところ、疫病がまん延する。村の代表が森の主である老人の所へ相談に行くと、老人のそばでは人の誤りを諭すという黄色い魚が泳いでいた。疫病が終息した後、村人が疫病と過ちを忘れないように魚を模して玩具にした、という内容だ。

 同市内の出版社代表坂本道子(さかもとみちこ)さんが、立松さんの没後10年を契機にリニューアル出版を企画した。企画を進める中、新型コロナウイルスの感染が広がり、初版本への問い合わせが相次いだという。坂本さんは「この絵本は普遍性がある。20年たっても古びていない」と話す。

 やまなかさんは、20年ぶりに「黄ぶな物語」と向き合った。初版時は21歳だったが、画家として20年の経験を積み画風が変わった。コロナ禍の中で物語の捉え方も変わり、初版にはなかった描くべき場面が次々浮かんだという。森は水色からはっきりと深い緑色に、村人は抽象的な絵から写実的な表現になるなど、構図や色使いが大幅に変わった。

 絵本は6月中旬ごろ、書店に並ぶ予定。坂本さんは「今の状況を立松さんはどう見ただろうと度々思う」としのぶ。「出版を機に、本県が生んだ立松さんという作家や作品なども知ってほしい」と話している。

 A4判横、28ページ。税別1800円。夏には、やまなかさんの夫で俳優の山中聡(やまなかそう)さんがナレーションで参加するDVDも発売する予定。(問)アートセンターサカモト028・621・7006。