プロ野球の名監督といえば、実績なら巨人を11度も日本一に導いた故川上哲治(かわかみ・てつはる)さんだ。阪急(現オリックス)、近鉄などを率いて日本シリーズに8度出場し、ことごとく負けた故西本幸雄(にしもと・ゆきお)さんを推す人も多いだろう▼1920年生まれで左投げ左打ちの一塁手という以外にも、2人には共通点がある。いち早く科学的なトレーニングを取り入れたことはあまり知られていない▼阪急の監督1年目、最下位に終わった西本さんは選手の体力不足を痛感。翌64年の高知キャンプで地元の陸上関係者にバーベルなどを使った筋力トレーニングの指導を頼んだ▼当初反発した選手も体つきが変わるにつれ、その効果を認め、練習への取り組み方も前向きになったという。67年には初優勝を飾り常勝球団へと歩みだす▼川上さんは65年、前年の東京五輪で陸上十種競技代表の鈴木章介(すずき・しょうすけ)さんを球界初のトレーニングコーチに招いた。月給2万円のサラリーマンだった鈴木さんに契約金200万円、年俸180万円。正しい走り方を教え、タブーだった水泳も練習に加えた。その年からV9が始まる▼「頑固オヤジ」とのイメージが強い2人だが、先見の明と柔軟な発想があったのだろう。それぞれの生誕100年記念試合は、コロナ禍で中止や延期になった。いずれ名将の足跡を伝える場を設けてほしい。