ロックダウン(都市封鎖)や広範な検査など新型コロナウイルス対策のうち、どれが有効だったかを調べる研究が欧州で進められている。ワクチンや重症化を防ぐ治療法がない今、喫緊の研究課題といえる▼英科学誌ネイチャーによると、英国の大学やオーストリアの研究機関が既に研究を始めている。ただ、施策と効果の関係を解き明かすのは難しい。数学を駆使し、その壁を越えようという挑戦的な研究だ▼英国には、感染症を数理的に研究する「感染症疫学」を育ててきた学問の厚みがある。日本では残念ながらこの分野の研究が盛んではなく、数少ない学者が頼りという状況が続く▼10年前、厚生労働省の新型インフルエンザ対策総括会議は、感染症疫学者の養成を推進する必要があると提言したが、実現しなかった。喉元過ぎれば熱さ忘れる。そのつけはいずれ回ってくる▼ほかにも、欧米の学問の厚みを感じることが多い。例えば米国科学アカデミーなどは3月以降、医療現場や政策判断に役立つ情報を発信し、米国数学会は関連分野の電子書籍を無料公開中だ▼それに引き換え、日本の学者や学術団体からの情報発信は乏しい。ツイッターでの発言は見掛けるが、専門知を広める情報発信の仕方は、他にあるのではとも思う。今こそ学問の存在感を示す時ではないだろうか。