営業を再開したが、通常よりも客が少ない「鹿の湯」=14日午前11時35分、那須町湯本

 栃木県を含む39県への緊急事態宣言が14日、解除された。感染対策と社会経済活動の両立を図る「新しい日常」が本格化する。外出自粛で打撃が深刻化している県内の飲食、観光業界からは手放しで喜ぶ声が聞かれなかった。「客足は容易には戻らない」「胸を張って客を呼び込むわけにもいかない」。宇都宮餃子(ぎょーざ)、温泉地。本県のブランドを支える事業者は、苦悩と共に再スタートする。

 「解除は歓迎したい。でも…」。宇都宮餃子会に加盟する宇都宮市田下町の「高橋餃子店」。2代目の高橋雅人(たかはしまさと)さん(45)は店内で複雑な表情を浮かべた。

 持ち帰り専門店として23年前に創業し、2015年に店内飲食ができる実店舗を構えた。大谷地区の観光名所にほど近く、週末は県外客でにぎわう。その日常はコロナ禍で一変した。

 県をまたぐ移動の自粛などを受けて、週末に1日30~40組訪れた客は数組へ激減。大型連休も客足は遠のいた。「このままの状態が続くと、正直厳しい」

 解除後も「客足が戻るとは思えない」。客席を間引き、消毒など対策を徹底するが「万が一感染者が出たら」と不安は尽きない。

 車の整備士でもある高橋さん。ギョーザの世界に飛び込んだのは7年前だ。初代店長の母光江(みつえ)さん(68)を手伝い、同会の先輩たちと交流するうちに、のめり込んだ。「ギョーザは宇都宮の観光資源。守り続ける」。15日の通常営業再開を前に、自らを奮い立たせた。

 「緊急事態宣言が出る前に戻るだけ。厳しい状況に変わりはない」。那須町湯本の日帰り温泉施設「鹿の湯」運営会社の星史(ほしひとし)社長(55)の顔に笑顔はない。

 開湯から1390年とされる、那須温泉のシンボル的存在。県や町からの協力依頼に応じ、4月25日~5月10日に休業した。11日に再開したのは、県の営業自粛緩和の方針を踏まえた以上に、「那須観光が立ち直れなくなる」との危機感が大きかった。

 泉質特有のガス成分に対処するため、もともと換気には気を配っているほか、従業員のマスク着用を徹底している。再開後の客足は前年の6割減。「3密になるほど混んでいない」が、解除後初の週末を控え、推移に目を光らせる。

 「第2波、3波のリスクを考えれば、まだ大手を振って客を呼び込めない」と天を仰ぐ。町内の宿泊、観光業者の多くはまだ再開せず、耐える日々が続く。「問題は夏場。それまでにウイルスの治療法など吉兆が見えないと、体力が持たない事業者が現れかねない」